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(2) 光触媒システム
電力エネルギーなどのエネルギーを介さないで、太陽からの光エネルギーで直接化学反応を行う試みに関心が高まっている。特に、NOxやSOxなどの分解やクリーンなエネルギーである水素を得ることを目的として、水を解する直接光分解が将来技術として期待されている。これまでは、太陽電池などにより光エネルギーを一端電力に変換した後に化学反応を行っていた。直接変換では、エネルギー損失がないため効率が高くなることが期待できる。このような直接分解法としては、光触媒による直接分解法が人工光合成への直接的なアプローチであり、次世代のエネルギーシステムとして高く期待されている。これにひとつの答えを示したのが、前述の本多−藤島効率による半導体光電極による水の光分解反応である。これは、陽極に二酸化チタン、陰極に白金を用い、短絡した状態で陽極の光半導体に光を照射すると、電極を浸している電解質溶液が分解して、陽極から酸素が、一方陰極からは水素が発生するものである。酸化チタンという無機物を利用して水素を製造できるということで当時高い注目を集めた。しかも我が国の研究者が発見者ということで、我が国の多くの研究機関が実用化に向けて一斉に研究に着手した。しかしながら、太陽光利用による水素製造という観点では、必ずしもかんばしい成果は得られていない。最大の理由は、変換効率がどうしても向上できないのである。酸化チタンの吸収帯の多くは紫外部にあるため、太陽光とのマッチングは必ずしもよくなかった。このため、光触媒材料としては、
? 材料を微粒子化する研究
? 光増感作用を利用した研究
? 金属間化合物を用いた研究
? 有機化合物を用いた研究
などが行われてきた。このうち、?と?とを組み合わせることにより、太陽光の吸収効率や電子の生成効率が大きく高まることがわかってきた。これは、生命のエネルギー変換の仕組みを取り入れたものである。酸化チタンなどの光半導体を微粒子にすることにより電極を一体化できることがわかってからは、高い効率とともにシステムもシンプルとなった(図5−6)。
一方、水の直接分解においても、太陽光のスペクトル分布とのマッチングを目的として、ルテニウム錯体などの色素分子の増感作用の活用が図られている。光半導体触媒は、容易に入手することが可能であり利用方法も簡単だというメリットがある。
これまでの研究は、二酸化チタンの微粒子の空間的な配列については何ら制御していなかった。生物のアンテナ複合体の例を見るまでもなく、光励起エネルギーを可能なかぎり効率よく利用するためには、複合体としての光半導体システムの

 

 

 

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